無実と無罪の違い

「法律的無実」と「法律的無罪」とは?

「無罪」とは「起訴」され「刑事裁判」を経た「量刑無し」という「結論」です。「無実」は「逮捕送検」され「検察庁の第二次上位捜査」を経た「犯罪事実は無い」という「結論」です。

今回の事件で、警察官より、「無実と無罪は違う」という発言あり、「不起訴」は「無実ではない」と「誤解」している様でした。驚いたことに、弁護士にも「同じ発想」の方が多数いらっしゃるようなので、無実と無罪について述べたいと思います。

「無罪」=「法律的無罪」とは?

「無罪」とは「起訴」された「刑事裁判」を経た結果、要は、一旦、有罪」になった上で「量刑無し」という「結論」です。

起訴されるとは、検察庁で「犯罪者だと判断」されたので、「求刑手続きを行う」ことを言います。「有罪」だからこそ、その罪に応じた科刑をし、その程度を審議するのが「刑事裁判」です。

「刑事裁判」で、「量刑有り」の場合は「有罪」で「科刑」。

「刑事裁判」で、「量刑無し」の場合は「無罪」で「釈放」。 

「刑事裁判」を経る以上、この「無罪」とは「法律的な無罪」の意味であり、あくまでも「量刑無し」という意味です。あくまで、一旦、「有罪」が前提です。

刑事裁判で「無罪」は「無実」にはなりません。

「無実」=「法律的無実」とは?

「無実」とは「逮捕送検」され「検察庁の第二次上位捜査」を経た結果、「犯罪事実は無い」という「結論」です。

「不起訴」とは「犯罪が成立していない」=「犯罪の事実が無い」ので、法律的な判断として、「起訴(求刑手続き)はしない」という意味です。

犯罪の事実が無いので「無実」であり、「不起訴」とは「法律的無実」を意味します。「求刑手続き」は「無し」ですので、当然、「量刑」も「無し」です。そのため、「無罪」の意味も含みます。ですが、「不起訴」は「無罪」ではありません。「起訴」されていないからです。

「起訴」は、被疑者に犯罪の事実が有るため、有罪 ⇒ 求刑手続き

「不起訴」は、被疑者に犯罪の事実が無いので、無実 ⇒ 釈放

 

「不起訴」は「無実」であり、「無罪」にはなりません。

 

 

無実と無罪を混同する理由

非常に多くの方々が、無実と無罪を混同する理由は、

1.社会では刑事裁判での「無罪」の方が注目され易いから

一般社会では、「不起訴」の場合は、警察も検察も「事件終了」と思い込んでいるようですし、法律上、「不起訴」の捜査情報は当事者であっても非公開であるため、どうして逮捕されて、どうして「不起訴」になったかは、ニュースのなりません。一方、刑事裁判の場合は、「有罪」が前提ですので、情報は社会に公開されます。「無罪」がニュースになるのは、「本来起り得ないケース」だからです。

2.法律的な意味と、社会での実施的な意味が重なるから

刑事裁判で「無罪」の場合は、「量刑無し」なので「釈放」になります。

これは、「証拠不十分」であっても、法理的な判断として、「無罪」は「無罪」です。一時不再理の原則から、「量刑無し」の判断が覆ることはないので、法律的な無罪は、社会での実質的な無実と同じ意味を持ちます。

一時不再理の原則:一度裁判にかけられ、有罪・無罪の判決又は免訴の判決が確定した場合には、同じ事件について同じ人を再び裁判にかけることを許さない

一方、「不起訴=無実」とは「起訴されない場合」であり、「犯人では無い」ので「釈放」になります。

これは、「嫌疑不十分」であっても、法理的な判断として「無実」は「無実」です。

 

「無罪」は、「無実」にはなりませんが、実質的には「犯人では無いことが判明した」という意味になるため、「社会的に無実」となり、「無罪」=「無実」だと思っている方が非常に多いようです。

ですが、刑事裁判で「無罪」は「無実」にはなりません。「法律的な無実」ではありません

 

「不起訴」で「法律的な無実が証明」された人間を、

「不起訴」となった「逮捕事実」に基づき、

「有罪」前提で「行政処分」を行う事は違法行為です。

 

警察が、無実と無罪を正しく理解し、正常な捜査フローに戻ることを願います。

 

それには、まず、社会全体として、「言葉の本来の意味」を理解し直す必要があると思います。

この投稿が役に立てばと思います。